緑の葉を支える栄養素たち
(窒素、苦土、微量要素の補給の仕方)

なぜ植物は緑色に見えるのか?

植物が緑色に見える理由は、緑色の光を吸収せず反射しているからです。光の吸収は「葉緑体」という器官の中の「クロロフィル(葉緑素)」という色素で行っており、光が当たることで光合成をしています。自然の中で作物は太陽光を浴びて育ちますが、太陽光に含まれる赤色と青色の光を吸収し光合成に使い、私たちが見ている緑色は光合成に使われなかった反射された光なのです。

ちなみに秋になると紅葉し、葉が緑ではなく黄色や赤色に見えます。これは秋に落葉する葉は光合成をする必要がなくなるため、葉の中のクロロフィルが分解されてしまうためです。

太陽光は様々な波長(色)の複合光です。複数の波長がほぼ均等にバランスよく集まると無色透明な白色光となります。透明の太陽光をガラス製のプリズムを使うと光の屈折を利用し、光を波長ごとに分けることができます。幅広い波長を持つ太陽光の中で人間が見ることのできる波長は380nmの紫から780nmの赤と言われ、この範囲以下は紫外線、範囲以上は赤外線となり人間の目には透明に見えます。植物の場合は、波長の短い青付近や波長の高い赤付近の光を吸収し、緑を吸収することができません。また、人間が最も見やすい波長は可視領域のほぼ真ん中である緑(555nm)です。ちなみに鳥や昆虫は人間が見ることができない紫外線を見ることができます。

クロロフィルと光合成

クロロフィルはどんな形をしているのでしょうか?

クロロフィルの主な材料はアミノレブリン酸(ALA)という特殊なアミノ酸と窒素と苦土です。クロロフィルを作る際は、アミノレブリン酸と窒素で骨格を作り、仕上げに核である緑に見える素の苦土を入れ完成します。そして葉が黄色く枯れていくとき、葉の中ではクロロフィルから苦土が外れ、クロロフィルはフェオフィチンに変化します。フェオフィチンは黄色の色素です。この苦土が外れる原因は酸性雨にあたったり、熱がかかると外れやすくなります。また葉緑体自体の寿命により2週間程度で半減するというデータもあります。フェオフィチンには光合成をする能力はなく、クロロフィルに再び合成されることもありません。フェオフィチンは葉緑体内で光をエネルギーに変更する際に使用されますが、最終的には水溶性の分解産物となって葉緑体から液胞に移動していきます。そしてクロロフィルを失った葉緑体の内部構造も徐々に分解されていき、最後には葉緑体そのものも分解され葉が枯れてしまいます。

葉色を維持するために…

雨や熱により緑色のクロロフィルは黄色のフェオフィチンになってしまいますが、これらを避けて栽培することは非常に難しく、仮に避けられたとしても葉緑体自体の寿命により何もしないとクロロフィルは減っていきます。それではどのようにすれば、緑色の葉を維持することができるでしょうか?

①クロロフィルの材料を補給

 クロロフィルはアミノ酸(アミノレブリン酸)、窒素、苦土と水や空気から得られる炭素、酸素、水素でできています。アミノ酸は窒素と炭素、酸素、水素でできているため、窒素や苦土を肥料で補給してあげるとクロロフィルの原料を補給することができます。また、現在はアミノレブリン酸入りの肥料も販売されており、たくさんあるアミノ酸の中でもピンポイントに必要なアミノ酸を補給することも可能です。

②クロロフィルを作るのに必要な微量要素を補給

 上記のクロロフィルの材料以外にもクロロフィルを作るために必要な養分があります。例えば、クロロフィルの骨格を作るために鉄が必要だったり、核になる苦土をはめ込むために銅が必要だと言われています。また、光合成をするために吸収した水の分解をマンガンが行うなど、微量要素の補給も葉色を維持するポイントとなります。

③施用方法を考える

 いくら窒素や苦土が必要だと言っても補給の仕方があっていないといけません。例えば苦土を補給する場合、作物がかなり小さな生育初期に水溶性の硫酸マグネシウムを施用してしまうと、吸収されきれず、流亡し、生育後半まで効果が持続しない可能性があります。クロロフィルの材料や微量要素を補給する際は、追肥や葉面散布を用い、生育期間を通して定期的に供給してあげると効率よく葉色の維持ができます。また、マルチ栽培など追肥での対応ができない、トンネルを張って葉面散布が行えない場合は、基肥に緩効性の肥料を用いたり、キーゼライト(天然硫酸苦土資材)の様に水溶性かつゆっくりと溶ける資材を選択すると良いでしょう。

作物の体を作る9割以上が酸素、炭素、水素といった光合成や呼吸により吸収する要素です。収量を多くすればするほど光合成や呼吸をたくさん、また生育後半まで行わなければいけません。そのためには緑色で元気な葉っぱを維持しなければいけません。そこで窒素、苦土、微量要素などの補給に注目してみてはいかがでしょうか?

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