土壌と肥料の選択 (1)

さまざまな土壌

日本国内には、さまざまな性質をもつ土壌が分布しており、その性質や分布する地形に応じて畑・水田・草地などに利用されています。代表的な土壌には「黒ボク土:国土の31%」「褐色森林土:同30%」「低地土:同14%」西日本に多く分布する「赤黄色土:同10%」などがあります。それぞれ有機物含量や排水性の良否など特有の性質をもっています。さらに、農地の集約や耕地整備が進められるなかで、人の影響を強く受けた「造成土」の増加により、土壌の性質はより複雑になっています。

変化する作物

さらに、品種の改良や栽培技術の向上、あるいは換金性の高い作物への転換など、従来と異なる作物がつくられる場面が増えると同時に、圃場の高度利用により回転率が高まっている地域も増え、昔から言われる「適地適作」ではない場面が増えたり、土壌からの収奪がより強くなるなる場面も増えています。

求められるコスト削減

一方で、消費形態の変化や輸入農産物の増加などにより、農産物の販売価格は安値安定の方向にあり、生産者の手取りを増やすという意味で、栽培コストの削減が求められています。特に栽培規模が大きくなるほどその傾向は強くなり、それぞれの土壌に合わせた土壌改良や肥料選択がなされなくなり、結果として品質の低下や収量減を招く結果となっていることも否めません。

土壌と肥料のミスマッチ

今回取り上げた事例は、太平洋に面した海岸地帯に広がる砂質未熟土の圃場です。しかし、この地域には大きな河川があり、河川の堆積物で形成された灰色低地土が混在する複雑な土壌分布となっています。

一帯に広がるブロッコリー畑は、一見すると同じ砂質未熟土が広がっているように見えるのですが、国道を1本隔てて200mほど離れた圃場では、生育の様子が全く異なっていました。これは表層の砂質未熟土の下に灰色低地土が分布していたためなのですが、問題は下層まで砂質未熟土が分布する圃場での肥培管理です。

有機物・粘土質に乏しく保肥力の低い砂質未熟土のため、追肥回数を増やす工夫をされていたのですが、全てアンモニア態窒素を窒素源とした肥料であったため、アンモニアの過剰害が発生していました。

*保肥力の低い土壌では、アンモニア態窒素は土壌に吸着されずストレートに作物に吸収されてしまいます。

(写真1) アンモニア過剰症の葉
(写真1) アンモニア過剰症の葉
(写真2) アンモニア過剰と乾燥からのホウ素欠乏症
(写真2) アンモニア過剰と乾燥からのホウ素欠乏症
(写真3) カリ過剰からの苦土欠乏症状
(写真3) カリ過剰からの苦土欠乏症状

土質に合った肥料選択

今回のような土壌の場合、堆肥の投入や緑肥の作付けなどが推奨されますが、実際に地力が向上するには時間がかかります。それまでの間、作柄を安定させる方法は基肥ならびに追肥として緩効性の肥料を利用することです。それも硝酸化抑制タイプではアンモニア態窒素の蓄積につながるため、ウレアホルム態窒素のように徐々に窒素が溶けだすタイプを施用することが望ましいと考えます。

(写真4) 同時期に定植、この圃場は追肥回数も多いが生育が悪い。
(写真4) 同時期に定植、この圃場は追肥回数も多いが生育が悪い。
(写真5) 同時期に定植、この圃場は下層に灰色低地土が分布している。
(写真5) 同時期に定植、この圃場は下層に灰色低地土が分布している。

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