地球温暖化と未来の農業を考える②

世界の温室効果ガスの排出量

世界全体の温室効果ガスの分野別排出量を図1に示しました。排出量の合計は490億トン(CO2換算、2010年データ)あり、農業・林業・その他土地利用(AFOLU ※1 )の排出量は世界全体の排出量の24%程度になります。そのうち約10%は農業に起因するもので、残りの約14%は森林の減少に起因しています。これを日本に置き換えると、日本全体の温室効果ガス排出量は12億1,200万トン(CO2換算、2019年データ)、その3.9%が農業由来となります(燃料の燃焼を含む) ※2

 次に世界の農業分野から排出される温室効果ガスの内訳を見ると、CH4とN2Oが排出されているのが大きな特徴です。これらの主な発生原因は、土壌、家畜の消化管、家畜の排泄物中に生息する微生物の反応などです。CH4とN2OはそれぞれCO2の25倍、298倍の地球温暖化効果を持つガスです。またグラフ内には含まれていませんが、農機や農業施設などでの化石燃料の消費や植物性の有機物が燃焼する際にCO2も発生します。

※1:Agriculture, Forestry and Other Land Useの略。
※2:国立環境研究所「温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)」より

日本の農業から排出される温室効果ガス

日本の農林水産分野から排出される温室効果ガスを図2に示しました。最も多く排出されているのはCH4で、稲作や畜産から発生しており、農業由来であることがわかります。次に多いCO2は、そのほとんどが機械や施設を動かすための燃料の燃焼によるもので、農林水産分野全体から発生しています。一番発生の割合が少ないN2OにおいてもCH4同様に農業由来であることがわかり、世界の農業分野と同じ傾向と言えます。

日本のCH4とN2Oの排出原因

日本の総CH4排出量の76.8%は農業由来で、その中でも最も発生が多いのは稲作です(図3)。いわゆる水田の「ガス湧き」により発生します。これは水田特有の現象で、水田には水を張るため土壌が嫌気的条件になり、その条件下で有機物の分解が進むとCH4を含む様々なガスが湧くことを指します。日本を含むアジアは、世界の水稲の栽培面積の約9割を誇り ※3 、水田が多いため稲作由来のCH4排出量が多いと考えられます。次に多い家畜のげっぷは、世界的には農業分野で一番CH4排出量が多い項目です。ウシやヒツジ、ヤギなどの胃を4つもつ反芻動物の1つ目の胃の中にいる微生物の働きでCH4を発生させるのです。

次にN2Oを見てみましょう。日本の総N2O排出量の46.8%は農業由来で、最も発生が多いのは農用地の土壌によるものです(図4)。これは主に施肥した窒素肥料や圃場に残した作物残渣などが微生物により分解される過程で発生します。特に施肥量が多い茶園での発生が顕著と言われています。また、次いでN2Oの発生源である家畜の排泄物に関しても微生物による分解の過程でN2Oを発生させます。

※3:FAOSTAT(2011~2016年の平均データ)より

農業は私たちの生活を支える重要な産業であり、やめることはできません。そこでどのようなところから温室効果ガスが多く排出されているかを理解し、減らしていく様々な取り組みが世界レベルで研究・開発されています。

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