地球温暖化と未来の農業を考える①
地球温暖化とは
地球温暖化とは、「温室効果ガス」により地球全体の平均気温が上昇していく現象のことです(図1)。温室効果ガスによるほどよい保温効果は、生き物にとって住みやすい環境を保ちます。しかし温室効果ガスが増えすぎると、地球規模で気温が上昇し(図2)、海水の膨張や氷河の融解により海面が上昇、また気候変動により異常気象が増え、自然生態系や生活環境、農業などへの影響が懸念されます。近年、毎年のように発令される「大雨特別警報」
※1
や35℃以上の猛暑日の増加など、温暖化を実感することも少なくないと思います。
※1:避難指示に相当する気象状況の次元をはるかに超えるような現状をターゲットに発表される警報。2017年以降毎年発令されている(2022年2月現在)。


温室効果ガスとは

温室効果ガスには二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、フロン類(CFCs、HCFCs)があります。人間活動の増加により、温室効果ガスの発生量は年々増えています。IPCC ※2 第5次評価報告書によれば、温室効果ガス別の地球温暖化への寄与は、二酸化炭素76.0%、メタン15.8%、一酸化二窒素6.2%、フロン類2.0%となっています(図3)。地球温暖化に及ぼす影響が最も大きいのは、石炭や石油など化石燃料の燃焼、セメントの生産などにより大気中に放出される大量の二酸化炭素と言えます。また二酸化炭素に次いで地球温暖化に影響が大きなメタンは、湿地や池、水田で枯れた植物分解する際に発生します。その他にも家畜のげっぷにもメタンが含まれています。
※2:国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略。人為起源による気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、1988年に国連環境計画と世界気象機関により設立された組織。
地球温暖化が与える日本農業への影響
地球温暖化により日本の年平均気温偏差は、100年あたり1.24℃の割合で上昇しており、年平均気温は長期的に上昇し、2020年には統計を開始した1898年以降最も高くなりました(図4)。また、1時間あたりの降水量が50mmを超える大雨も年々発生回数が増加しています(図5)。


高温により、水稲は高温障害である粒が白く濁る白未熟粒が発生したり(写真1)、果樹の着色不良が発生したり(写真2)、涼しいはずの北海道でさえ真夏の高温により作物の葉が焼けてしまい光合成量の低下などが発生しています(写真3)。作物の品質や収量の低下だけではなく、夏の暑さからのストレスにより家畜が夏バテし、乳牛では牛乳の生産量が減り、肉牛では牛肉の生産量が減ったりします。また、近年は異常気象による大雨の結果、畑やハウスが冠水したり、台風の強い風によりハウスなどが壊れる被害も増えています。




すでに農業現場では様々な地球温暖化からの影響を受けていますが、このまま気温があがり続けるとより大きな減収を招き、現在作付けしている作物が作れなくなることも予想されています。対策をしないまま21世紀末を迎えると、世界の平均気温は3~4℃上昇すると予想され(図6)、例えば下記のようなことが起きる可能性があります ※3 。
・米の収量が、東北以南で8∼15%減収、北海道では13%増収
・全国で大豆の収量が6∼10%減収
・北海道がリンゴ栽培の適地になる
・東北地方南の沿岸部がミカンの適地になる
・全国の1割以上の鶏肉農家で生産量が15%以上低下する
今、私たちがどのような対策をとり、どのような未来を選択するのか岐路に立たされているのです。
※3:未来年表(生活総研:https://seikatsusoken.jp/futuretimeline/)未来予測関連の記事やレポートから「〇〇年に、〇〇になる」といった情報のみを厳選し、西暦年や分野ごとに整理した未来予測データベース。