土壌と肥料の選択 (2)

特殊な土壌

前回は日本国内に分布する代表的な土壌の分布割合と、海岸地帯に多く見られる「砂質未熟土」での事例を挙げて、土壌の種類(性質)によって、窒素肥料の種類を選ぶ必要があることをお話ししました。
作物を育てるうえで、土壌を評価するポイントは複数あるのですが、その一つに「土壌pH」があります。殆どの国内土壌はアルカリ資材(石灰質肥料)の供給を続けなければ、石灰分が流亡してpHが低下してしまいます。しかし、一部には石灰肥料を入れないのにpHが8.0を超えてしまう特殊な土壌もあるのです。

沖縄本島には性格の異なる土壌が分布

表1 本島南部八重瀬町のピーマン圃場分析結果 当該地区のハウスでは一般的な分析結果。 苦土/加里は適正域であっても、石灰/苦土が高くバランスの悪いハウスが多く、交換性苦土は過剰なのに、苦土欠が出やすい。 さらにハウスによってはリン酸が100㎎を超える場合も珍しくない。
表1 本島南部八重瀬町のピーマン圃場分析結果 当該地区のハウスでは一般的な分析結果。 苦土/加里は適正域であっても、石灰/苦土が高くバランスの悪いハウスが多く、交換性苦土は過剰なのに、苦土欠が出やすい。 さらにハウスによってはリン酸が100㎎を超える場合も珍しくない。

奄美、沖縄、宮古、八重山を含む琉球諸島には、石灰岩を母岩(土壌の素)とする土壌が分布する地域があります。土壌の素が石灰岩ですから、石灰質肥料を施さなくても土壌中には石灰分が豊富に含まれ、土壌pHも中性の7.0どころか8.0も超えているケースもあります。これら土壌の交換性カルシウムの分析値は、露地でも700~800㎎/100g、施設では1,000㎎/100gを超えている事も珍しくなく、「島尻マージ」「ジャーガル」と呼ばれています。一方で、本島北部から中部にかけてと、八重山諸島にも分布する「国頭マージ」は酸性の土壌で、沖縄県の約55%がこれにあたります。全てに共通するのは「粘土質に富む」という点です。

*マージ“真地=赤い土”に由来し、ジャーガル“謝刈=中部にある地名”に由来すると言われています。

高温・多雨の環境で少ない腐植、低いCEC

沖縄地方は亜熱帯性海洋気候の特徴を持ちます。島による差はありますが、年間降水量は2,200mm、年間平均気温は22℃近くになり、一般的に有機物の分解・消耗が早いため、腐植含量およびCECが低いという共通の特徴があります。さらに島尻マージやジャーガルはpHが高いこともあり、腐植の消耗が一層早くなっていることが考えられます。前回お話しした、海岸線に広がる「砂質未熟土」とは全く異なる土壌でありながら、肥培管理を行う上では共通の注意点があると言えるのです。

難しい肥培管理

有機物・粘土質に乏しく保肥力の低い砂質未熟土であれば、不足するものをユックリと長く効く肥料で、必要なものを必要なだけ補う施肥を考えれば良いのですが、島尻マージやジャーガルのように、pHが7を大きく超えて石灰飽和度が200%、塩基飽和度が230%を超える状態では、そう簡単な話ではありません。有機質肥料を使ったとしても期待通りに長効きをしてくれませんし、地下水にも石灰が含まれるため「湛水除塩でリセット」という事も出来ません。

できることは塩基バランスを取ること、炭素率の高い有機物を施用すること

このような場合、基本にするのは「塩基バランス」です。過剰な石灰にピタリと苦土やカリをバランスさせることは困難です。しかし、それに近づけるだけでも作物の生育は大きく変わります。
また、沖縄は畜産も盛んなため畜糞堆肥が大量に使われるのですが、これが塩基バランスの崩れに拍車をかけ、窒素の肥効も早く現れるため、露地では盛夏期にソルゴーなどの緑肥導入、施設栽培では製糖工場から出るサトウキビのバガスやトラッシュなどの鋤き込みが物理性の改善に有効と考えます。
堆肥同様に、有機質肥料の分解も早いので、基肥を控えて追肥の割合を増やすことも大切です。

写真(1):苦土の分析値は適正値を超えているが、バランスをとるために苦土を単肥施用すると同時に、堆肥と基肥の有機入り配合肥料を減らして、追肥で追う形に。
写真(1):苦土の分析値は適正値を超えているが、バランスをとるために苦土を単肥施用すると同時に、堆肥と基肥の有機入り配合肥料を減らして、追肥で追う形に。
写真(2):従来通りに牛糞堆肥を投入し、基肥量も変えていない。葉がアンモニア過剰の様子を示しており、1番果は奇形果(窒素過剰による)のため、殆ど収穫できていない。
写真(2):従来通りに牛糞堆肥を投入し、基肥量も変えていない。葉がアンモニア過剰の様子を示しており、1番果は奇形果(窒素過剰による)のため、殆ど収穫できていない。

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